冒頭結論ブロック(一次データ付き)
結論から3行でお伝えします。
- AIに置き換えられにくい仕事を考えるとき、「職種まるごと」で考えるとほぼ全滅に見えて動けなくなります。正しいのは「タスク単位(業務を細かく分解した一つひとつの作業)」で見ることです。マッキンゼーの調査では、業務がまるごと完全自動化できる職業は5%未満にとどまる一方、約60%の職業で業務の3分の1以上が自動化可能とされています(出典は下に明記)。
- つまり多くの人にとっての現実は「職を失う」ではなく「自分の業務の一部が自動化され、残った業務の比重が変わる」です。だから取るべき動きは大きな転身ではなく、今の経験が9割そのまま効く隣の職種への横移動——社内異動か、近い職種への転職です。
- 本記事は、自分の業務を「代替されやすい/されにくい」タスクに分解する手順、隣接職種への横移動ルート、横移動で年収を保つ・上げる考え方を、20〜40代の非エンジニア会社員向けに整理します。
この記事で使う一次データ
- 完全自動化できる職業は5%未満/約60%の職業は業務の3分の1以上が自動化可能(出典:McKinsey「Jobs lost, jobs gained」(2017))
- 生成AIにより、2030年までに米国の労働時間の約30%が自動化されうる。一方で医療・STEM系専門職の需要は2022〜2030年で17〜30%増える見込み(出典:McKinsey「Generative AI and the future of work in America」(2023))
- 日本の労働人口の約49%が技術的には代替可能。ただし「創造性」と「社会的知性(人と関わる力)」を要する職業は代替されにくい(出典:野村総合研究所×英オックスフォード大学 共同研究(2015))
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この記事でわかること
- なぜ「職種まるごと」で考えると判断を誤るのか。「タスク単位」で見る枠組み
- 自分の業務を「代替されやすい/されにくいタスク」に分解する4ステップ
- 営業・事務・経理などからの、隣接職種への横移動ルート(社内異動・転職)
- 横移動で年収を保つ・上げるための考え方
- やりがちな失敗と、その回避策
- 筆者の考察と、よくある質問4問
専門用語の言い換えを先にお伝えします。
- タスク=業務を細かく分解した一つひとつの作業(例:「議事録を取る」「見積を作る」「顧客に提案する」)
- 横移動=今の経歴・スキルの大半が活きる、近い職種への移動。社内異動と、近い職種への転職の両方を指します
- 隣接職種=今の仕事と業務の重なりが大きく、不足分の学習が少なくて済む職種
- 生成AI=文章や資料を自動でつくれるAI(ChatGPTなど)
「職種まるごと」で考えると動けなくなる——だからタスク単位で見る
「AIに奪われない仕事は何か」と検索する方は多いです。ただ、この問いの立て方には落とし穴があります。職種を一つの塊として「この職業は残る/消える」と考えると、白か黒かの判断になり、ほとんどの仕事が危うく見えて、かえって動けなくなるのです。
ここで効くのが、マッキンゼーの調査結果です。同社の分析では、業務がまるごと完全自動化できる職業は5%未満にすぎません。一方で、約60%の職業は、その業務の3分の1以上が自動化可能とされています(出典:McKinsey「Jobs lost, jobs gained」(2017))。
この2つの数字が示すのは、次のような現実です。
- 仕事がまるごと消える人は、ごく一部にとどまる
- ただし、多くの人は「自分の業務の一部」が自動化され、仕事の中身が変わる
つまり多くの会社員に起きるのは「失業」ではなく「業務の組み替え」です。生成AIの登場で、この組み替えはさらに加速しています。マッキンゼーの別の調査では、生成AIによって2030年までに米国の労働時間の約30%が自動化されうる一方、医療やSTEM系の専門職など、人にしかできない判断や対人の比重が大きい職業の需要は2022〜2030年で17〜30%伸びると見込まれています(出典:McKinsey「Generative AI and the future of work in America」(2023))。
だからこそ、考える単位を「職種」から「タスク(業務を分解した一つひとつの作業)」に下げる必要があります。あなたの仕事は、まるごと残るか消えるかではありません。いくつかのタスクの束でできていて、その中に「自動化されやすいタスク」と「されにくいタスク」が混ざっている——この見方ができると、次の一手が具体的になります。
「されにくいタスク」の3つの特徴
野村総合研究所が英オックスフォード大学と行った共同研究では、日本の労働人口の約49%が技術的には代替可能とされました。ただし同研究は、「創造性」と「社会的知性(人と関わる力)」を要する仕事は代替されにくいと指摘しています(出典:野村総合研究所×英オックスフォード大学 共同研究(2015))。
これを実務のタスクに翻訳すると、代替されにくいタスクには次の傾向があります。
- 対人で信頼や合意をつくるタスク:交渉、利害調整、クレーム対応、チームのまとめ役
- 答えが一つに定まらない判断のタスク:何を優先するかの意思決定、企画の方向づけ、例外への対応
- 現実世界の文脈と結びついたタスク:現場の事情を踏まえた提案、人を動かす説明
逆に、ルールが明確で繰り返しの多いタスク——定型的な集計、決まった書式への転記、議事録の文字起こし、一次情報の収集——は、自動化されやすい側に寄ります。
自分の業務を「されやすい/されにくい」に分解する4ステップ
ここからは手を動かす作業です。紙でもAIでもできます。
ステップ1:1週間の業務をすべて書き出す
まず、直近1週間で自分が実際にやった作業を、できるだけ細かく書き出します。「営業活動」のような大きな塊ではなく、「商談の議事録作成」「見積書の作成」「提案資料の構成を考える」「顧客の予算事情を踏まえて値引き幅を判断する」のように、一つひとつの作業に割ります。職種の公的な分解例が知りたい方は、厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)が、職業ごとに「タスク」と「スキル」を整理しており参考になります。
ステップ2:各タスクに「自動化されやすさ」を3段階でつける
書き出したタスクごとに、次の3段階で印をつけます。
- A:自動化されやすい(定型・繰り返し・ルールが明確。集計、転記、文字起こしなど)
- B:一部だけ自動化される(下書きや叩き台はAIが作れるが、最終判断は人が要る。提案資料の初稿、メール文面の素案など)
- C:されにくい(対人の信頼づくり、答えの定まらない判断、現場文脈の読み取り)
ステップ3:時間の比率を見る
各タスクに「週あたりおおよそ何時間使っているか」を添えます。すると、自分の労働時間がA・B・Cにどう配分されているかが見えます。Aの比率が高い人ほど、業務の組み替えが早く来ます。Cの比率が高い人ほど、AIを使いこなせれば価値が上がります。
ステップ4:AIに分解を手伝わせる(任意)
手作業がつらければ、生成AI(ChatGPTなど)に手伝わせる方法もあります。「以下は私の1週間の業務リストです。各タスクを『定型で自動化されやすい/下書きは自動化できるが判断は人が要る/対人や判断中心で自動化されにくい』の3つに分類し、それぞれの理由を1行で添えてください」と指示文(AIへの命令文)を渡すと、叩き台が返ってきます。ただし最終判断は自分で行ってください。自分の仕事の文脈はあなたが一番よく知っています。
この4ステップを終えると、「自分はA寄りの仕事に時間を使いすぎている」「Cの強みがあるのに活かせていない」といった現在地が、感覚ではなく事実として見えてきます。次は、その現在地からどこへ横移動するかです。
隣接職種への横移動ルート(社内異動・転職)
横移動とは、今の経歴の大半が活きる近い職種への移動です。「営業からエンジニア」のような大転身ではありません。今の仕事のCタスク(されにくい強み)を軸に、AIと相性のよい隣の職種へずらすのが基本です。
横移動の考え方:強みのタスクを軸に隣を探す
たとえば営業職の場合、強みは「顧客との信頼づくり」「相手の事情を踏まえた提案」「合意形成」というCタスクです。この強みが活きる隣接職種を探すと、次のような候補が見えます。
| 今の職種 | 活きるCタスク(強み) | 横移動の候補(隣接職種) |
|---|---|---|
| 営業 | 顧客理解・提案・合意形成 | カスタマーサクセス、AIツールの導入支援、インサイドセールス企画 |
| 一般事務 | 業務全体の段取り・関係者調整 | 業務改善・自動化の推進担当、AIツール導入の社内窓口 |
| 経理 | 数字の意味づけ・異常の発見 | 経営企画寄りの分析、財務データの活用推進 |
| 人事・採用 | 人を見る目・面談での見極め | 採用設計、人材データ活用、AI面接運用の社内担当 |
共通するのは、「定型作業を手で回す役」から「AIで定型を回す仕組みをつくる役・人にしかできない判断を担う役」へずらすという方向です。営業から隣接職種への移り方は、AIをチームの一員のように使いこなす役割を扱った「AIオーケストレーター」というキャリアの考え方(I-1)で、より具体的に解説しています。
ルート1:社内異動でずらす
まず検討したいのが社内異動です。転職より低リスクで、今の業界知識や社内人脈がそのまま使えます。
- 進め方:上司との面談や社内公募の機会に、「自分のCタスクの強み」と「AIで効率化できた実績」をセットで示す
- 効きやすい異動先:DX推進、業務改善、AIツール導入の旗振り役、企画系の部署
- 準備すること:まず今の部署で、Aタスク(定型作業)をAIで効率化した小さな実績を1つ作る。これが異動交渉の材料になります
社内でAI活用を起点に評価を上げ、異動・昇進につなげる流れは、AIを管理する側に回るマネジメントの考え方(I-9)で掘り下げています。
ルート2:転職で隣接職種へ移る
社内に移れる先がない、もしくはより条件のよい環境を狙うなら転職です。横移動の転職では、「未経験職種への挑戦」ではなく「経験の8〜9割が重なる隣接職種への移動」として応募するのが通りやすくなります。
職務経歴書では、次の3点をセットで書くのが効きます。
- これまでのCタスクの実績(対人・判断・調整で出した成果を、数字を添えて)
- AIで業務を組み替えた実績(Aタスクをどう効率化し、何時間・何割減らせたか)
- 応募先の隣接職種との業務の重なり(自分の経験のどこが直接活きるか)
求人を探す段階では、幅広い職種の求人が集まるリクナビNEXTのような大手転職サイトで、「今の職種名」と「AI」「DX推進」「業務改善」などを組み合わせて検索すると、隣接職種の求人が見つかりやすくなります。横移動を3〜6ヶ月のスケジュールに落とし込む具体的な進め方は、AIスキルで転職する6ヶ月プラン(I-2)を参考にしてください。
横移動で年収を保つ・上げる考え方
「横移動だと年収が下がるのでは」という不安はもっともです。ここを誤解しないために、考え方を整理します。
横移動で年収が下がるのは、「Aタスク(定型作業)の担い手」として横移動したときです。定型作業はAIで安くなる方向なので、その役割で移ると評価も上がりにくくなります。
逆に年収を保つ・上げられるのは、次のどちらかを満たすときです。
- Cタスク(対人・判断)の担い手として移る:人にしかできない部分を担うので、希少性が下がりません
- 「AIで定型を回す仕組みをつくれる人」として移る:自分一人ぶんではなく、チームの生産性を上げられるので、評価が上がりやすい
前述のとおり、マッキンゼーの調査では、人にしかできない判断や対人の比重が大きい専門職の需要は2022〜2030年で17〜30%伸びる見込みです(出典:McKinsey「Generative AI and the future of work in America」(2023))。需要が伸びる側へ、自分の強みを軸に移る——これが横移動で年収を守る考え方の核です。
面接や年収交渉では、「AIで○○の作業時間を△割減らし、空いた時間で□□という判断業務に注力できた」という形で、減らした時間(コスト削減)と、生み出した価値(判断・対人)の両方を語れると説得力が出ます。
やりがちな失敗と、その回避策
企業メディアがあまり書かない、横移動でつまずきやすい点を挙げます。
失敗1:いきなり遠い職種へ飛ぼうとする
不安が強いと、「営業からデータサイエンティストへ」のような遠い転身を狙いがちです。しかし重なりが小さい移動は学習負担が大きく、年収も一度下がりやすくなります。まずは経験の8〜9割が重なる隣接職種から始め、そこで実績を作ってから次へ進むほうが、結果的に速く・高く進めます。
失敗2:AIツールを「使える」止まりにする
「ChatGPTを使えます」は、もう差別化になりません。評価されるのは、自分の業務のどのタスクを、AIでどう組み替え、どんな成果が出たかという具体です。ツール名ではなく、業務の組み替えの実績で語ってください。
失敗3:Cタスクの言語化を後回しにする
横移動の武器は、AIに置き換えられにくいCタスク(対人・判断)の実績です。ところが多くの人は、定型作業の効率化ばかり職務経歴書に書き、肝心のCタスクを言葉にできていません。「自分が関わったから合意できた・前に進んだ」場面を、数字や状況とともに書き出しておきましょう。
失敗4:分解を一度きりで終える
業務とAIの状況は半年単位で変わります。タスク分解は一度やって終わりではなく、3〜6ヶ月ごとに見直すものとして扱うと、変化に先回りできます。
筆者の考察:怖いのは「職種」ではなく「タスクの固定」
ここは筆者の見方です。
AIに仕事を奪われる不安の正体は、「職種が消えること」よりも、「自分が同じタスクだけを長くやり続けて、それが定型作業に固定されてしまっていること」にあると感じています。実際、AIで一番先に置き換わるのは、ルールが明確で繰り返しの多いAタスクです。逆に言えば、自分のタスクの中身を意識して入れ替え続けている人は、職種の名前が何であれ、置き換えられにくい側へ自然に寄っていきます。
横移動という言葉は受け身に聞こえるかもしれませんが、実態は逆です。自分の業務を分解し、強みのタスクを軸に、需要が伸びる隣へ自分でずらす——これは、変化に流されるのではなく、変化を使って自分の立ち位置を選び直す能動的な動きです。職種を一つの塊で守ろうとするより、タスクの組み合わせを更新し続けるほうが、これからの時代は強い、というのが現時点での筆者の考えです。
まとめ(3行)
- 「職種まるごと」ではなく「タスク単位」で見る。完全自動化される職業は5%未満、多くの人は業務の一部が組み替わるだけです。
- 自分の業務をA(されやすい)・B(一部)・C(されにくい)に分解し、Cの強みを軸に隣接職種へ横移動する(社内異動・転職)。
- 年収を保つ・上げるには、定型の担い手ではなく「判断・対人の担い手」「AIで仕組みをつくる人」として移ること。
次のアクション(今日できること)
直近1週間の自分の業務を、まず10〜15個のタスクに書き出してみてください。それだけで、自分がA寄りかC寄りか、どこへ横移動できそうかの当たりがつきます。隣接職種の求人の雰囲気を知りたい方は、リクナビNEXTで「今の職種名 × AI / DX推進 / 業務改善」を検索してみると、横移動先のイメージがつかめます。
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あなたの仕事の中で、「これは自分にしかできない(=AIに置き換えられにくい)」と感じるタスクは何ですか。コメントで教えていただけたら嬉しいです。
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