冒頭結論
結論から3行でお伝えします。
- 経営企画・事業開発の「調べる・整理する・提案する」業務は、ChatGPTで期間を半分以下に短縮できます
- 市場調査・SWOT・KPI設計には固有の「型」があり、プロンプトにするだけで再現性が上がります
- ただし役員向け資料ほど、AI臭を消す言葉の置き換えが質を左右します
経営企画は「時間はないのに質は落とせない」職種の代表格です。本記事では、調査・分析・提案の各フェーズで使える5つのプロンプトと、役員向け資料で失敗しないためのコツを紹介します。
まず押さえたい一次データ
- 経営企画部門の生成AI活用率は約46%で、管理部門では最も高い水準です(PwC「日本企業の生成AI活用実態調査」2025)。
- 生成AIを活用した企業では、戦略立案から実行までの期間が平均で約28%短縮されたという報告があります(McKinsey「The state of AI」2025)。
つまり、経営企画においてAI活用は「差別化要因」ではなく、もはや「前提条件」になりつつあります。
経営企画・事業開発がChatGPTで使える5領域
領域1|市場調査レポートの骨子作成
市場調査レポートは、最初の骨子づくりに最も時間がかかります。ChatGPTで骨子→自分で肉付け、の流れにすると、レポート全体の期間が半分になります。
プロンプト例1|市場調査レポートの骨子作成
- 目的:役員会向けの市場調査レポートの目次と各章の論点を作る
- プロンプト(コピペ可):
```
あなたは経営企画部のシニアアナリストです。
以下の条件で、市場調査レポートの骨子を作成してください。
# テーマ
- 調査対象市場:[例:国内の中小企業向けSaaS市場]
- 調査目的:[例:自社新規参入の可否判断]
- 調査期間:[例:2024〜2026年の3年分]
- 報告先:[例:経営会議(月次)]
# 出力形式
- エグゼクティブサマリー(3行)
- 目次(5〜7章)
- 各章の論点(各章3つずつ)
- 必要な一次データの候補(出典名・入手方法)
- 想定される結論パターン(3つ)
# 条件
- 数字は仮置きで「[要調査]」と記載
- 各章は「問い→データ→示唆」の構造
- 結論を先に書くトップダウン型
```
- 期待する出力:そのままレポートの設計図として使える骨子
- 注意点:ChatGPTは「それらしい市場規模」を勝手に書くことがあります。「[要調査]」という仮置きを必ず入れさせます
領域2|プレゼン資料の構成設計
役員プレゼンは「構成7割・内容3割」と言われるほど、論理の流れが重要です。ChatGPTは構成案を複数パターンで出せるため、比較検討に向いています。
プロンプト例2|プレゼン構成の3パターン作成
- 目的:同じテーマでも伝え方の違う3パターンの構成案を比較する
- プロンプト(コピペ可):
```
あなたは経営企画部の戦略担当です。
以下の条件で、役員プレゼン資料の構成案を3パターン作成してください。
# 前提
- テーマ:[例:新規事業A案の投資判断]
- 持ち時間:15分(スライド10枚程度)
- 聴衆:代表取締役・取締役3名
- ゴール:投資承認を得る
# 出力
パターン1:課題先行型(問題提起→解決策→投資判断)
パターン2:機会先行型(市場機会→自社強み→実行計画)
パターン3:リスク先行型(想定リスク→対策→投資判断)
# 各パターンの出力形式
- スライド構成(タイトル+要点1行)
- 各パターンの強み・弱み
- 推奨される聴衆タイプ
```
- 期待する出力:3種類の構成案と、それぞれの向き不向き
- 注意点:AIはどのパターンにも「それっぽい数字」を入れがちです。数字はすべて自分で差し替えます
領域3|SWOT分析の論点整理
SWOT(強み・弱み・機会・脅威)は型がシンプルですが、抜け漏れなく埋めるのは意外と難しい作業です。ChatGPTに論点を網羅させると、議論のたたき台が早くできます。
プロンプト例3|SWOT分析のたたき台作成
- 目的:自社・競合・市場の情報から、SWOTの論点を網羅する
- プロンプト(コピペ可):
```
あなたは事業開発の戦略担当です。
以下の情報を元に、SWOT分析のたたき台を作成してください。
# 自社情報
- 事業内容:[例:BtoB SaaS・従業員80名]
- 主力顧客:[例:中堅製造業]
- 財務状況:[例:黒字・成長率年20%]
# 市場情報
- 市場規模:[例:国内2,000億円・年率8%成長]
- 主要競合:[例:3社・2社は海外大手・1社は国内ベンチャー]
- 規制動向:[例:個人情報保護法改正でセキュリティ要件強化]
# 出力形式(表)
| 分類 | 項目 | 内容(50字以内) | 根拠となる事実 |
| S | 強み1〜4 | | |
| W | 弱み1〜4 | | |
| O | 機会1〜4 | | |
| T | 脅威1〜4 | | |
# 条件
- 各項目には「根拠となる事実」を必ずセットで書く
- 主観的な意見は「[仮説]」と明記
- 同じ内容を言い換えただけのものは重複とみなす
```
- 期待する出力:根拠付きのSWOT表。そのまま議論の叩き台に使えます
- 注意点:根拠欄が「一般論」になっていないか確認します。「顧客満足度が高い」のような抽象表現は、具体数値に書き換えが必要です
領域4|KPI設計の論点洗い出し
KPI設計は「どの指標を選ぶか」で成否が分かれます。ChatGPTで候補を広く出させてから、自社で絞る運用が効率的です。
プロンプト例4|KPIツリーの候補出し
- 目的:事業目標からブレイクダウンしたKPI候補を網羅する
- プロンプト(コピペ可):
```
あなたは経営企画のKPI設計担当です。
以下の事業目標から、KPIツリーの候補を作成してください。
# 前提
- 事業:[例:BtoB SaaS・サブスクリプション課金]
- 最終目標:[例:2026年度のARR 30億円]
- 現状:[例:ARR 18億円・解約率年15%]
# 出力形式
- 最終KPI(1項目)
- 中間KPI(3〜5項目/計算式付き)
- 先行指標(各中間KPIに2〜3個ずつ)
- KPIの役割(売上拡大/継続率改善/コスト最適化で分類)
- 計測難易度(◎=既存システムで取得可/○=追加開発必要/△=調査必要)
# 条件
- 売上・利益以外の指標を必ず含める(NPS・継続率など)
- 「計測できない指標」は除外
- 先行指標は「行動量」ではなく「先行する成果」を選ぶ
```
- 期待する出力:階層構造のKPI候補表。経営会議で絞り込みに使えます
- 注意点:AIが提示する計算式は正確性が不十分な場合があります。経理・財務部門と一度照合してから確定します
領域5|競合分析フレームの作成
競合分析は「何を比較するか」で質が決まります。5〜10社を同じ軸で比較する表の下書きは、AIが得意です。
プロンプト例5|競合分析表の作成
- 目的:競合企業を同じ軸で比較する一覧表を作る
- プロンプト(コピペ可):
```
あなたは事業開発のリサーチ担当です。
以下の条件で、競合分析表のたたき台を作成してください。
# 自社情報
[事業概要・主力商品・強みを3行で]
# 比較対象
[競合3〜5社名と既知の情報を貼り付け]
# 比較軸
- ターゲット顧客
- 主力商品・価格帯
- 差別化要素
- 直近の戦略動向
- 想定される弱点
# 出力形式
| 項目 | 自社 | 競合A | 競合B | 競合C |
# 条件
- 情報源が不確かな項目は「[要確認]」と記載
- 数字は必ず「いつ時点の情報か」を付記
- 推測で埋めず、不明は「不明」と書く
```
- 期待する出力:そのまま戦略会議に出せる競合マトリクス
- 注意点:競合の売上・シェアなどの数字は、AIの学習時点が古く誤りが多いです。公式IR情報で必ず裏取りします
経営企画でやってはいけない失敗例
失敗1|非公開情報(M&A案件・未公表計画)を貼り付ける
最も重大なリスクです。M&A検討案件・未公表の新規事業計画をChatGPTに貼ると、外部サーバーに情報が渡ります。インサイダー情報の漏洩につながる可能性もあります。
対策:社外秘情報は絶対に入れません。一般化した設問(「BtoB SaaS企業が新規参入を検討する際の論点」など)に置き換えて相談します。
失敗2|市場規模の数字をそのまま引用する
ChatGPTは「国内SaaS市場は1兆円規模」といった、もっともらしい数字を出します。しかし出典を確認すると、存在しない資料を参照していたり、古い情報だったりします。
対策:市場規模・シェア・成長率は必ず矢野経済研究所・IDC・調査会社の一次情報で裏取りします。AIには「構造の議論」のみ任せます。
失敗3|役員向け資料の文体がAI臭を消せていない
ChatGPTの文章は「〜と考えられます」「〜ではないでしょうか」が多用され、経営層が読むと「これAIが書いたな」と気づきます。信頼を失うきっかけになります。
対策:役員資料は必ず自分の言葉に直します。特に「結論」「提言」の章は、AI出力をそのまま使わず、自分で書き直すのが鉄則です。
失敗4|SWOTやKPIを網羅しすぎて意思決定に使えない
ChatGPTは「網羅性」が得意なため、SWOTもKPIも20項目以上出してしまいます。そのまま経営会議に出すと、論点が拡散して意思決定できません。
対策:出力後に「最重要3つに絞る」というプロンプトを追加実行します。人間が絞らないと、情報量に埋もれて判断できなくなります。
失敗5|「それらしい示唆」を経営判断の根拠にする
AIが出す示唆は、根拠データが曖昧なまま「〜すべき」と言い切ることがあります。これを経営判断に使うと、後から「なぜこの結論になったのか」を説明できません。
対策:示唆の裏に必ず「根拠データと出典」をセットで出させます。根拠が曖昧なものは、経営判断の根拠に使わないルールを徹底します。
Q&A
Q1|経営企画でChatGPTを使うなら、無料版と有料版どちら?
A. 有料版(ChatGPT Plus)を推奨します。長文の戦略ドキュメントや大量の競合情報を扱うため、文字数制限と出力品質の両方で有料版が適しています。
Q2|DeepResearch(Web調査機能)は使うべき?
A. 一次情報の「あたり」をつけるには便利です。ただし出力をそのまま引用せず、必ず自分で原典にアクセスして確認します。公式IR情報・政府統計で裏取りする運用が安全です。
Q3|経営企画でAIスキルをアピールして転職したいです
A. 「戦略立案のリードタイム短縮」「KPI設計の内製化」「競合分析の定例化」を数字で示すと評価されやすいです。書き方はA-5:職務経歴書のAI活用アピール実例を参考にしてください。
Q4|役員がAIを嫌がる場合、どう進めるべき?
A. 「AIで作った」とは言わず、「いつもより早く論点を整理してみました」で通す選択肢があります。最終成果物の質で勝負するアプローチが、保守層には効きます。
Q5|経営企画職の年収はAI活用で上がりますか?
A. 活用実績を数字で示せる人は、年収交渉で有利になります。D-1:AI時代に年収が上がる人・下がる人の5つの違いで詳しく解説しています。
まとめ
- 経営企画の「調べる・整理する・提案する」業務は、5領域のプロンプトで期間を半分以下にできます
- 市場調査・SWOT・KPI・競合分析・プレゼンは、型をプロンプト化すると再現性が上がります
- 非公開情報の扱いと、役員向け資料の文体調整を徹底すれば、信頼を損なわずに活用できます